ド・レ・ミなど、音の名前のことを「音名(おんめい)」と言います。
一方、「階名(かいめい)」という呼び方もありますよね。
でも、この2つの違いがよく分からない方もいらっしゃるでしょう。
どちらも同じ「ドレミ」を表す言葉ではあるんですが、この2つの意味は少し違います。
音名は何となく想像がつきやすいと思いますが、階名の「階」は音階の「階」を表しているんです。
そう考えると分かる方もいるかもいらっしゃるかもしれませんが、でも難しそうに感じますよね。
でも理屈が分かればこの2つの違いを理解するのはそんなに難しくはありません。
今回は、「音名」と「階名」の違いについて勉強していきましょう。
音名と階名の違い
音名と階名といえば以下の説明が定番です。
- 音名とは、絶対的な音の高さの呼び方。
- 階名とは、相対的な音の高さの呼び方。
※絶対的というのは他に比較するものがない1番の基準となるもの、相対的とはある基準に対して比較したもののことを意味します。
つまり、絶対的なのか相対的なのか、それが音名と階名の違いです。
ですが、この説明だけでは分かりにくい方もいらっしゃると思いますので、もう少しくわしく見ていきましょう。
音符を読む時に調性を考えるかどうか
上の画像を見てみましょう。
これはヘ長調の音階が書かれた譜面ですが、赤で書かれたものが音名、紫で書かれたものが階名です。
音名と階名では音の呼び方が異なっていますね。
簡単に言えば、音名は楽譜に書かれた音符をそのまま単純に読む呼び方で、階名はそれが何調かによって音の読み方が変わる呼び方。
つまり、音符を読む時にそれが何調なのかを考えるか考えないかの違いです。
それではこの2つの違いについてより理解を深めるために、音名と階名について説明していきます。
絶対に変わることのない「音名」
上の画像は、先程のヘ長調の音名だけを書いたものです。
このヘ長調の音名としての音符の読み方は、譜面上に書かれたように「ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ」です。
このように、音名は単純にその音そのものの名前のことを言います。
下の画像を見てみましょう。
先程のヘ長調の譜面に書かれた音名をピアノの鍵盤に書いてみました。
読み方のところでは「シ」とだけ書きましたが、ヘ長調のシの音は正確にはシのフラット(♭黒鍵の音)ですね。
この中の「ファ」の音を例にして説明しますね。
まず、ファの音はファである、という事をあらためてしっかり認識してみましょう。
それって当たり前だと思うけど、それがどうしたの?
ピアノの鍵盤上に書いたファは世界共通で間違いなく「ファ」であって、絶対に他の音に変わることはありません。
太陽が西から昇ることはあっても、この「ファ」の音が別の音に変わることはないんです。
最初の音名の説明のところにあった「絶対的な音の高さの呼び方」を分かりやすく説明するとこういう意味になります。
このように、音名は何のひねりもなくただ単純に譜面に書かれた音をそのまま読むだけなので難しくはありません。
では次に、ちょっと複雑な「階名」について見ていきましょう。
「調性」によって変わる「階名」
この上の画像も先程と同じヘ長調の音階ですが、これには階名だけが書かれています。
音名の読み方では最初の音は「ファ」だったのに、どうして階名では「ド」と呼ぶの?
これが階名マジックです
下の画像を見てみましょう。
これは最初に出てきた音名・階名が書かれたヘ長調の譜面と、音階・階名が書かれたハ長調の譜面です。
この2つの譜面の音名・階名をよく見比べてみてください。
ヘ長調は音名・階名がそれぞれ違いますが、ハ長調は音名・階名どちらも全く同じです。
これはどういうことなの?
音楽には、ハ長調とかへ長調、ト長調とかその他いろんな「調性」がありますね。
ヘ長調だったら、ファから始まってファ・ソ・ラ・♭シ・ド・レ・ミ・ファという音階、ト長調だったら、ソから始まってソ・ラ・シ・ド・レ・ミ・#ファ・ソという音階などなど。
ほとんどの曲には「調性」があり、音楽はこの調性をもとにした音階の音を基本に作られています。この音階が階名のナゾをとく鍵になるんですよ。
例えばヘ長調の音階の1番最初の音は「ファ」ですね。
この「ファ」はピアノの鍵盤上では単純にファという音ですが、ヘ長調の1番最初の始まりの音なので音楽理論上ではヘ長調の「ド」にあたります。
つまり、ピアノの鍵盤上の「ファ・ソ・ラ・♭シ・ド・レ・ミ・ファ」はヘ長調にとっての「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」になるということです。
階名っていうのは、その調性の音楽理論上の音の読み方のことを言うんだね。
その音階の1番目の音が「ド」にあたるわけですが、2番目以降の音について一覧表を書いてみました。
その一覧表と先程のヘ長調・ハ長調の譜面を一緒に見てみましょう。
音階の1番目の音 | ド |
2番目の音 | レ |
3番目の音 | ミ |
4番目の音 | ファ |
5番目の音 | ソ |
6番目の音 | ラ |
7番目の音 | シ |
8番目の音 | ド |
なるほど~。階名読みをするときは、それが何調かを考えれば分かるんだね。
ここまで理解出来たら、先程のハ長調の音名と階名が全く同じである理由も分かるはずです。
もう1回ハ長調の譜面の画像を載せますね。
下の画像はピアノ鍵盤上のハ長調の音階です。
つまり、ハ長調はピアノの鍵盤上の「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」と音楽理論上の「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」が全く同じ音なので、音名と階名が一致するんです。
ここまで分かれば、音名と階名の違いは十分に理解出来ていると言えますよ。
では次に、音名・階名を使った歌い方についてご紹介しましょう。
音名唱法・階名唱法と固定ド・移動ド
歌を歌う時に、歌詞で歌わず音符の名前で歌うことがありますね。
例えば、「かえるの歌」をか~え~る~の~う~た~が~ではなく、ド~レ~ミ~ファ~ミ~レ~ド~といった感じです。
この音符での歌い方には次の2通りがあります。
- 音名唱法(固定ド)
- 階名唱法(移動ド)
音名・階名については先程説明しましたね。
音名唱法は音名で歌うことで階名唱法は階名で歌うことです。
では「固定ド」「移動ド」とは何でしょうか?
楽譜を音名読みするときのドの音の捉え方を「固定ド」、階名読みするときのドの音の捉え方を「移動ド」と言います。
下の画像を見てみましょう。
これは「きらきら星」の楽譜をニ長調で書いたものです。
この楽譜に音名唱法と階名唱法を書いてみました。
いわゆる、音名読み・階名読みと同じですね。
この楽譜に書かれているニ長調は「レ・ミ・#ファ・ソ・ラ・シ・#ド・レ」という音階なので、この調の1番目の音「ド」に当たるものは「レ」の音ですね。
固定ドと移動ドの意味も、音名・階名の説明と結局は同じです。
- 音名唱法は音符を音名読みするので、「ド」の音はピアノ上のドの音と同じで固定されて変わらない。→ドが固定されているので「固定ド」。
- 階名唱法は音符を階名読みするので、「ド」の音はピアノ上のドではなく調性によって変わる(移動する)。→ドが調性によって移動するので「移動ド」。
音を音名の捉え方にすると固定ド、階名の捉え方にすると移動ドになるんだね。
でも階名唱法なんて、楽譜に階名をあらかじめ書いておかなきゃ無理って思われるかもしれません。
でもこれをラクラクと歌っちゃう方もいるんです。
そういう人ってその曲が何調であるか分かったら、音の感覚が自然に「移動ド」になって階名がスラスラ出てくるんです。
こういう人のことを、俗に「移動ドの人」という言い方をします。
友達同士で「私、固定ドなの」とか「私は移動ドなんだよね」なんて会話が出る事もありますね。
ちなみに私が知っている中では、声楽専攻の人には移動ド感覚の方が多いように思います。
まとめ
今回は、音名と階名の違いについて勉強してみました。
この2つの違いについて理解するには、まず音名・階名がそれぞれどういうものなのか分かっておく必要があります。
音名は、単純に楽譜に書かれたまま読めばいいだけなので簡単ですが、階名は理解するまでに少し難しかったかもしれませんね。
階名について理解するには音階の基本を知っておく必要があります。
例えばシャープ(#)が1つ付く調はト長調かホ短調、フラット(♭)が1つ付く調はヘ長調かニ短調などなど。
シャープが何個ついていたら何調なんて覚えられそうにない、と思うかもしれませんが、1度覚えてしまえばそれほど大変なものではありません。
全調性を覚える方法はあるのですが、無理に覚えようとしなくても色んな音楽や譜面を目にする機会が増えると、自然に調性の感覚が身に付いてきます。
曲を聴いただけでその曲の調性が大体分かるようになったり、階名読みすることもそれほど難しくなくなります。
音名は音符を普通に読むことさえ出来ればだれでも分かりますが、音名と階名についてちゃんと説明できればちょっと自慢出来ちゃうかもしれません。
この機会に音名・階名の違いについて理解を深めて、あなたの音楽知識を1歩前進させましょう。