とってもメジャーで人気楽器の1つであるサックス。
厚みがあるブィ~という魅力的な音色で人々を魅了し、演奏している姿はカッコよすぎ。
モテるための必須条件の1つに挙げてもおかしくないくらい大人気のサックスは、幅広いジャンルで活躍します。
吹奏楽、ジャズ、マーチングバンド、ポップ、軍楽隊などなど。
もちろんオーケストラでも大活躍なんだよねと思ったら、通常サックスはオーケストラの編成には含まれません。
あんなに大人気の楽器なのになんで?と思いますよね。
私が吹いているクラリネットとはマウスピースやリード・リガ―チャーの形も似ていて、まるで親戚みたいな楽器のサックス。
クラリネットにとって身近な存在の楽器がオーケストラからハブられているなんて、私としては黙って見過ごしているわけにはいきません。
今回は、オーケストラの編成にサックスが入っていないことについて見ていきます。
通常オーケストラに入らないサックス
世間では人気者なのに、なぜサックスはオーケストラでは基本ハブられているかを見ていきましょう。
サックスは歴史が浅い楽器
なぜサックスはオーケストラでは仲間外れなの?と思ってしまいますが、これはサックスが他の楽器に比べて歴史が浅いからということに尽きますね。
サックスは正式名称をサクソフォーンあるいはサキソフォーンといい、1840年頃に作られた木管楽器。
参考までに他の楽器が作られた時期を見てみましょう(諸説あります)。
バイオリン | 1500年代初めころ |
フルート | 1600年代終わりごろ |
オーボエ | 1600年代半ばころ。オーケストラといえば弦楽器のみの構成が常識だったバロック期に、初めてオーケストラ編成に加わった管楽器でもあります。 |
クラリネット | 1700年ころ。 |
ファゴット | 1500年代半ばころ。 |
ホルン | 1400年代ころ |
トランペット | 1700年代半ばころ |
※ちなみに、記載した時期はその楽器の初期の形が出来た年代で、時代を経て楽器は現在の形に発達しました。
1840年頃といえば、クラシック音楽史でいうとロマン派の時期で、現在のオーケストラの編成が大体出来上がっていたころ。
そこに新しい楽器のサックスが世に知れ渡り、教則本の出版・ヨーロッパの音楽院での教育も始まり、サックスのオーケストラでの使用も実験的に行われました。
でも、固定パートではなくあくまでもゲスト出演的な使われ方が多く、現在でもオーケストラにとって欠かせない楽器とはなっていません。
その理由は、音量が大きくて他の木管楽器とバランスが取れないとか、サックスの音色が現代的であるとかその他様々な意見があります。
また、サックスは木管楽器と金管楽器の中間のような音色なので、サウンド的にどちらにも属さない独立的な立ち位置になるのかもしれません。
古くから受け継がれてきたオーケストラのサウンドに、常駐パートとして組み込むのは難しかったのかもしれませんね。
サックスが入るオーケストラ曲もある
オーケストラにサックスがないといっても、全く使われないというわけではありません。
サックスが出てくる曲もあるんですよ。
有名な曲をいくつか挙げてみます。(作曲年も一緒に記載してあります)
- ビゼー:アルルの女組曲(1872年)
- R.シュトラウス:家庭交響曲(1904年)
- バルトーク:かかし王子(1917年)
- ムソルグスキー/ラヴェル編曲:展覧会の絵(1922年)
- ミヨー:世界の創造(1923年)
- ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー(1924年)
- コダーイ:ハーリ・ヤーノシュ(1926年)
- コープランド:ピアノ協奏曲(1926年)
- ラヴェル:ボレロ(1928年)
- ガーシュウィン:パリのアメリカ人(1928年)
- プロコフィエフ:キージェ中尉組曲(1934年)
- オネゲル:火刑台のジャンヌ・ダルク(1935年)
- プロコフィエフ:ロメオとジュリエット(1938年)
- ハチャトゥリアン:ガイーヌ(1942年)
- ラフマニノフ:交響的舞曲(1940年)
- ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第9番(1957年)
これはほんの一部でまだまだあります。
年代から見て分かるように、サックスが入るオーケストラ曲は近代・現代以降に多く作られています。
サックス1人で参加する曲もあれば、複数で参加する曲も。
サックス1人だけで参加する場合は、重要なソロを担当することが多いですね。
一方、R.シュトラウスの「家庭交響曲」はサックス4人で参加する曲ですが、楽譜に「任意(自由)」と書かれてあるため、サックスなしで演奏することも出来ちゃう曲。
このように、サックスがオーケストラで使われる場合、重要なソロいわゆる「目立つ」パートとして使われる場合もあれば、あまり存在感が感じられない使われ方もあります。
オーケストラのサックスの配置
ではサックスがオーケストラに入った場合、どこに配置されるか確認してみましょう。
上の画像の赤い位置のように、客席から見てクラリネットの左横に座っている場合が多いですね。
やっぱりサックスとクラリネットは似た者同士的な間柄ですから、近くに配置されるんでしょうか。
クラリネットの特殊管(エスクラリネットやバスクラリネット)がある場合は、クラリネットの左横にエスクラ⇒バスクラが来て、さらにその左横がサックスになります。
また、曲やサックスの人数によって、クラリネットとファゴットの間に座ったり、ホルンの近くに座ったりなど色々あります。
その他のオーケストラの詳しい楽器配置について知りたい場合は、こちらを参考にしてください。
木管五重奏には含まれない
5つの管楽器で編成される音楽の形態に「木管五重奏」というものがあります。
サックスは木管楽器だし、木管五重奏だったらきっとサックス入るよねと思われそうなんですが、この木管五重奏からもサックスは仲間外れなんです。
クラシックの木管五重奏というと編成は以下の楽器になります。
- フルート
- オーボエ
- クラリネット
- ファゴット
- ホルン
サックスは立派な木管楽器だっていうのに、サックスじゃなくて金管楽器のホルンが入っているのが不思議です。
しかしこれも、サックスが新しい楽器だからということが理由になっていそうです。
管楽器の重奏アンサンブルが生まれたのは1700年代後半ごろ。
最初の頃はオーボエ②、クラリネット②、ファゴット②、ホルン②という編成で始まり、この頃から木管楽器とホルンが一緒に演奏する形態がありました。
その後1800年に入った頃に、フルート・オーボエ・クラリネット・ファゴット・ホルンという木管五重奏の編成が確立しました。
木管五重奏の編成が確立した時には、まだサックスは出来ていなかったんですね。
基本的な木管五重奏にサックスは入りませんが、新しい時代に作られた曲にはサックスが含まれている室内楽曲もありますし、サックスだけのアンサンブル曲もあります。
まとめ
今回は、オーケストラにサックスが入っていないことについてまとめてみました。
正確に言えば入っていないというより、サックスが入っているオーケストラ曲もあるけれど、歴史が浅いため固定パートとして組み込まれていないという意味でしたね。
でも、近代・現代以降はサックスを含むオーケストラ曲も作られていますし、室内楽曲もあります。
このような点からみても、オーケストラの常連楽器じゃないとはいえ、クラシック界で欠かせない楽器であることは間違いありません。
もしかしたら、時代と共にオーケストラの概念が変化して、サックスが固定パートとして編成に組み込まれる未来が来るかもしれませんね。