「オーケストラのビオラ」と聞いて、ビオラの座席がオーケストラの中でどの辺りなのかとか、ビオラが割と目立つオケ曲にどんなものがあるか分かる方はエライです。
「オーケストラの中でビオラってどこに座ってるの?」とか「ビオラとバイオリンって何が違うの?」なんて思われてしまうこともあるビオラ。
バイオリンみたいに華やかな旋律を弾いたりするパートではないですから、一見大した役割もなく地味そうに見えるかもしれません。
じゃあビオラなんていてもいなくてもどっちでもいいんじゃない?なんて言わないでください。
ビオラほど重要なパートはない、と言ってもいいほど、オーケストラにおいてとっても大切な役割りを担っているんです。
今回はオーケストラのビオラの役割りについて見ていきましょう。
オーケストラのビオラの役割
一見地味な印象を持たれがちなビオラ。
ではビオラのオーケストラでの役割を見ていきましょう。
超重要な内声部を担当
ビオラのオーケストラでの役割は、音楽のサウンドに欠かすことの出来ない内声部。
和音というものはいくつかの音で構成されていますが、その1番上でもなく1番下でもない、真ん中あたりのいくつかの音を内声部といいます。
一見するとあまり目立たないパート。
第1バイオリンなどと違い、主旋律を弾くことはほとんどありません。
時々旋律を弾くことがあっても、チェロと一緒に演奏する事が多いです。
ちなみに第2バイオリンも同じ内声部パートですが、ビオラと第2バイオリンの内声はまた違います。
ビオラの音域はバイオリンとチェロの中間に当たるので、演奏する音もバイオリンより低め。
また楽器がバイオリンよりも少し大きいので、音質も厚めで渋い感じになります。
音域的にいうと、高音の第1・第2バイオリンと低音のチェロ・コントラバスの丁度真ん中にはさまれた所に当たるので、余計に地味な印象を持たれるかもしれませんね。
でも、この地味そうな位置が実はとっても大切。
この位置で、ビオラは第2バイオリンやチェロに寄り添いながら上手くアンサンブルし、オーケストラの響きを内側から支えます。
誰かが「おまんじゅうのアンコの部分がビオラに当たる」と言っていましたが、正にその通り。
おまんじゅうは外側の見た目も大事ですが、中に入っているアンコがおいしくなければなりません。
ビオラの役割はまさにアンコそのもの。
よく「ビオラが上手いとオケの響きが良くなる」と言われますが、それも以上のことからお分かり頂けるでしょう。
ビオラの座る位置やパート割について
では、オーケストラのビオラの位置を確認してみましょう。
オーケストラの配置は何種類かありますが、最も一般的なのは第2バイオリンとチェロの間にはさまれた緑のマルで囲んだ所です。
また、バイオリンは第1バイオリン・第2バイオリンとパートが分かれていますが、ビオラには複数のパートはありません。
時々、同じ動きで音が上・下に分かれることはあっても基本的にビオラ全員で同じ譜面を弾きます。
人数もバイオリン程多くありませんし、その方が和声のバランス的に整いますね。
ちなみに、オーケストラの詳しい楽器配置を知りたい方はこちらをどうぞ。
最初からビオラだった人はほぼいない
ビオラ弾きの方を見てみると、最初からビオラをやっていました、という方はほとんど見たことがありません。
大抵は元々バイオリンをやっていて、その後ビオラに転向したという方ばかりです。
もしかしたら最初からビオラを弾いていたという方もいらっしゃるかもしれませんが、私は今のところお会いしたことがないですね。
ではなぜ途中からビオラに転向するのでしょうか?
バイオリンで挫折した人が多い
ビオラ弾きのほとんどはバイオリン経験者。
「バイオリンで挫折した」とか、「競争率が高いバイオリンよりも人数の少ないビオラの方が需要がありそうだから」といった理由でバイオリンから転向してくる方が多いようです。
また一般大学のオケの入団時に、バイオリンは人気が高く入団が難しそうでも、不人気のビオラであれば入りやすい、ということもあるそう。
知り合いのビオラ弾きは、「バイオリンだと無理そうだけど、ビオラならプロオケに入りやすいと思ったから転向した」と言っていました。
ビオラはバイオリンよりも楽器が少し大きく、音も低くなりますが、楽器の構え方や運指テクニックの基本は同じなので転向しても演奏しやすいようです。
しかし、バイオリンを弾くようにビオラを弾いても上手には演奏出来ません。
基本が同じだとは言ってもやはり異なる楽器なので、上手にビオラ演奏をするためにはそれなりの技術を身に着ける必要があります。
転向した結果ビオラ好きになる
では、バイオリンで挫折したからといって、ビオラ弾きの方々は嫌々ビオラを弾いているのかと言えばそんな事はありません。
楽器を演奏しているうちにビオラの魅力に目覚めます。
ビオラ独特の深い渋みのある音や、合奏時の内声部の醍醐味(ごだいみ)にハマるんですよね。
バイオリンがシャカシャカ主旋律を弾いているのを聴きつつ、絶妙なバランスを取りながらビオラの深みのある音で和声を内側から支えることに喜びを感じるようになるんです。
その気持ちは私もよく分かります。
私も、先頭に立って主旋律を奏でるよりその旋律を支えるような演奏をすることが好きですね。
私の場合は性格的なものも大きいかもしれません(人の後に付いていくタイプ)。
まとめ
今回は、オーケストラのビオラの役割についてご紹介しました。
今まで「ビオラは地味な楽器で、オーケストラ中にいてもいなくても変わりない」と思われていた方もビオラの良さを少しは理解できたでしょう。
ビオラの音は人の声に似ているとよく言われます。
ビオラは、音域的にはアルトパートにあたる中音域楽器で、キィ~としたバイオリンの音色よりも温かみがありホッとする音を持っています。
だからこそ、内声部をしっかりと支えるのに適しているともいえます。
おまんじゅうのアンコは、アンコ自体のおいしさはもちろんのこと、外側の部分とも上手く調和するおいしさでなければなりません。
アンコの味だけがとんがっていると、おまんじゅうとしてのおいしさが台無しです。
しっかりと存在感を感じさせつつ、周りとも上手く調和する事がヴィオラのオーケストラでの役割です。
そう考えると、ビオラという楽器のオーケストラでの演奏の難しさが良く分かりますね。
縁の下の力持ちともいわれるビオラ。
今度オーケストラの演奏を聴く機会があったら、ビオラの良い仕事ぶりにぜひ耳を傾けてみてくださいね。