オーケストラの演奏を心地よく聴いていると、突然「クワーッ」とガチョウの鳴き声が耳に入ってくる事があります。
あれ、この曲は動物が参加しているのかなと思ってよくよく聴いてみると、それはオーボエの音だった、というのはよくある話です。(いえ私だけですね、きっと。)
これは決してオーボエをディスってる訳ではありません。
この音質こそがオーボエの最大の特徴でもありますし、オーケストラに美しい華を添える役割を果たすのです。
そして、そんなオーボエの音が私は大好きです。
オーボエをやってればよかったなーと思うこともあるくらい。
という訳で、今回はオーケストラのオーボエの役割をご紹介しますね。
オーケストラのオーボエの役割
オーボエのオーケストラでの役割は主に以下の3つです。
- オーケストラのチューニングの中心。
- 木管楽器の高音部や内声部を担当。
- 花形的ソロ。
では1つずつ見ていきますね。
オーボエに音合わせするチューニング
最初にオーケストラの配置の中でオーボエがどこに座っているのかを確認してみましょう。
上の画像の水色の部分がオーボエの位置です。
客席側から見て、フルートの右横になりますね。
ちなみに、オーケストラの楽器の配置について詳しく知りたい方は、こちらを参考にしてください。
オーボエのオーケストラでの最も重要な役割は、「チューニング」です(例外もありますが、基本的にはオーボエがチューニングの中心です)。
演奏会でオーケストラ団員が舞台に入場してそれぞれ自分の席に座ると、オーボエのトップ奏者がA(ラ)の音を鳴らして、オケの全団員がそれを聴き自分の音程を合わせる「チューニング」を行います。
チューニングとは音合わせのことです。
音の高さとは、同じ「ラ」の音でも演奏する人によって少し高めだったり低めだったり微妙に差があります。
その微妙な音の高低差をなくしてなるべくピッチリとそろえるために、ある1つの楽器の音を聴いて全員それに合わせます。
そのある1つの楽器というのがオーボエなんです。
オーケストラの中にはたくさんの楽器があるのに、なぜオーボエに合わせてチューニングを行うのでしょうか?
それは、オーボエが音の高さを調整するのが難しい楽器だからです。
他の楽器は、音を高くしたり低くしたりある程度調整することが出来ます。
例えば弦楽器だったら、弦を巻き上げたり緩めたりすることで音の高さを調整できますし、管楽器だったら楽器の接合部を抜き差しすることで調整します。
オーボエにも楽器の接合部分がありますが、他の楽器と違い楽器の構造上簡単には抜き差しが出来ないため音の調節がききません。
そのため、他の楽器がオーボエに音を合わせるようになっているのです。
ちなみに、木管楽器のファゴットも簡単に抜き差しして音程の調節が出来るような所がないんですよね。
ではなぜ、ファゴットではなくオーボエにチューニングを合わせるのでしょうか?
オーボエは温度差による音程の変化が少なくて音程が正確だとか、音がよく響いて他の楽器の人にも聴こえやすいなど、諸説あるみたいですね。
木管楽器の高音部や内声部を担当
オーボエもフルートに次ぐ高音部を担当する楽器です。
フルート程高い音は出ませんが、同じ木管楽器のクラリネットやファゴットに比べるともう少し高い音域を中心に演奏します。
楽器としての音域はクラリネットに近いのですが、オーボエよりもクラリネットの方が低い音が出ますし、オーボエの音質的にも高音部向きですね。
また、フルートとクラリネットの間くらいの音域を中心に演奏する楽器でもあるので、時には内声部も担当します。
オーボエの独特な音質が内声部に加わることにより、サウンド全体により深みを与えてくれます。
「ザ・オーケストラ感」あふれるソロ
オーボエはオーケストラ曲でソロを担当する事が最も多い管楽器の1つ。
そしてオーボエ独特な音質は、これこそオーケストラ!と思わせるクラシック感がいっぱいで花形のソロがぴったり。
弦楽器の響きの上に流れていくオーボエのソロは、鳥肌が立つほど気高さがあります。
フルートも優美さにあふれていますが、オーボエにはフルートとは違う高尚さがありますね。
私がイチオシのオーボエのソロは、チャイコフスキー作曲ピアノ協奏曲の第2楽章や同じくチャイコフスキー作曲の交響曲第4番の第2楽章。
このソロは涙もの。
それに、ボロディンの「ダッタン人の踊り」のオーボエソロも最高!
その他数えきれないほど、オーボエのステキなソロはたくさんあります。
楽しいオーボエの仲間
オーケストラで使われるオーボエには、一般的なオーボエだけでなくこれによく似たもう少し大きい楽器もよく使われます。
それがコーラングレです。
コーラングレとはフランス語で、英語読みでイングリッシュホルンと言われることもありますが、この記事ではコーラングレという表現を使いますね。
コーラングレとオーボエの楽器を並べて見てみましょう。
コーラングレはオーボエより管の長さが約30cm長く、下の部分が丸みがある形になっているのが特徴です。
そして、オーボエより音が低く、より柔らかく深みのある音が出ます。
オーケストラでこの楽器の演奏する時は、オーボエの2番奏者が持ち替えて吹くか、あるいはコーラングレのみを演奏する奏者が存在する場合もアリ。
また、コーラングレはオーボエより楽器が大きいので、ストラップを使って楽器を首から吊り下げて演奏します。
コーラングレを使った有名な曲に、ドヴォルザーク作曲交響曲第9番「新世界」があります。
この曲の第2楽章のコーラングレのソロは、誰でも聴いたことがあるというくらいとっても有名。
哀愁漂うすてきな旋律です。
まとめ
今回は、オーケストラのオーボエの役割についてまとめてみました。
チラッと聴くとガチョウが鳴いているように思える楽器ですが、ただのガチョウではありません。
オーケストラ曲にこの上ない華を添える役割を果たし、スーパーハイソサエティで超お上品な金のガチョウ、それがオーボエです。
そして、最初のチューニングはオーボエの音に合わせてから曲が始まることから、オーケストラ全楽器の音程のリーダー的存在でもあります。
こうやって考えると、私が普段考えている以上にオーボエってオケの重鎮的存在ですね。
バイオリンのコンサートマスターだって、チューニングに関してはオーボエに従わなきゃならないので、ある意味オーボエはオケの裏ボス。
この記事を書いたことにより、もっともっとオーボエ様を尊敬しなければという気持ちが強くなりました、私は。
あなたも、今度オーケストラの曲を聴く機会があったら、オーボエ極上の「クワ―ッツ」に耳を傾けてみて下さいね。