クラリネットといえばどういうイメージでしょうか。
吹奏楽だと1番人数が多くて前列でピーピーと盛んに吹いているアレでしょう、という感じですかね。
オーケストラではどうかというと、演奏している人数は大体2人、オーケストラの編成が大きくなってもせいぜい3~4人くらいです。
吹奏楽では人数も多く主な旋律を担当するスター的な存在なのに比べて、オーケストラでは人数も少なく、同じ木管楽器のフルートやオーボエの後ろに隠れて一歩引いてるようなイメージのクラリネット。
でもクラリネットには吹奏楽とはまた違う、しかもフルートやオーボエには果たせないオーケストラでの大切な役割がちゃんとあります。
今回はオーケストラのクラリネットの役割について紹介しますね。
オーケストラのクラリネットの役割
クラリネットのオーケストラの役割は主に次の3つです。
- 主に中音域・内声部を担当。
- クラリネットの特性を生かしたソロや主旋律。
- 基本的に内声部を担当することが多いが、楽器の音域が広いので高音部や低音部を担当することも。
では1つずつご紹介します。
基本的に内声部を受け持つことが多い
はじめに、オーケストラでクラリネットが座っている位置を確認してみましょう。
クラリネットが座っている位置は、上の画像の水色の部分です。
クラリネットの前列にいるのがフルートとオーボエで、いわゆる木管楽器の後列に位置しています。
ちなみにオーケストラの詳しい楽器配置についてお知りになりたい方は、こちらを参考にして頂くとよく分かりますよ。
高すぎず低すぎず中くらいの音域を中心に演奏するクラリネットは、オーケストラでは主に内声部を担当することが多いですね。
内声部とは、和音の上の音(高音)と下の音(低音)に挟まれた和音の中身を担当している音のことです。
高音・低音でもない音だと地味そうに思われるかもしれませんが、この中身の音というものはサウンドにとっても重要です。
音程を上手く取るのも難しいですし、和音により良い深みを与えられるかはこの中身担当によって決まるというくらい。
木管楽器の音はそれぞれとても個性的ですが、クラリネットの音は柔らかさ・あたたかさ・のびやかさがあり、周りの音になじみやすい特色があります。
それが内声部にとても適しているのです。
あたたかいクラリネットの音が和音の中間に置かれることにより、周りの音に溶け合ってサウンドに味わい深さを与えてくれます。
クラリネットらしいソロや主旋律
木管楽器の花形といえばフルートやオーボエかもしれませんが、クラリネットもけっこうソロを演奏します。
曲によっては、フルートやオーボエよりもクラリネットの方がソロを多く担当するものもありますよ。
クラリネットのソロは、フルートやオーボエのソロとはまた一味違います。
先程も書きましたが、木管楽器の音はそれぞれとても個性的。
フルートのソロは優雅・華麗、オーボエのソロは高貴・崇高なイメージですが、クラリネットのソロは柔軟性・深み・あたたかさに満ちています。
また、クラリネットの音は音域により印象が変わるんです。
低音は他の低音楽器に負けないくらいの幅広さと太さ、中音は最もクラリネットらしい柔らかさとあたたかさにあふれた響き、高音は鋭さと輝かしさをもった華やかさがあります。
音域の特性を生かした個性的なソロを演奏出来るところが、クラリネットソロの特徴の1つですね。
また、曲の中で主旋律を吹くこともあります。
音楽の流れが変わって新しい旋律をトップバッターで吹き始めたり、弦楽器と一緒に主旋律を演奏したり、主旋律とは別の動きで裏メロを吹くことも。
表・裏両方の役割をキッチリこなせるのがクラリネットです。
高音部や低音部を受け持つことも
クラリネットはオーケストラの楽器の中で1、2争うほど音域の広い楽器です。
そのせいか、内声部だけでなく時には高音部・低音部を演奏する役割を担当することがあります。
高音部を吹くときには、バイオリンやフルートなどと一緒にあるいはクラリネットだけで演奏したり、低音部を受け持つときはチェロやファゴットなどと一緒に動いたり。
クラリネットは、広音域であるために幅広い役割が果たせるオールマイティーな楽器といえるでしょう。
楽しいクラリネットの仲間たち
オーケストラで使われるクラリネットには、一般的なクラリネットと少し特殊なクラリネットがあります。
次に、一般的なクラリネットを2種類と特殊なクラリネットを2種類ご紹介しますね。
普通のクラリネットB菅とA菅
オーケストラで使われる普通のクラリネットには、B菅(ベーカン)とA菅(アーカン)の2種類があります。
一般的によく知られたクラリネットはB菅で、吹奏楽でズラ~とたくさんいるクラリネットもこのB菅です。
この2つの楽器は構造も指使いも全く同じですが、A菅の方が少しサイズが大きくて低い音が出るんですよね。
音色の特徴にも少し違いが。
B菅は少し明るめ、A菅は少し渋みがあって深めの音が鳴ります。
よく聴くと少し違う、というくらいの差かもしれませんが。
吹奏楽でA菅が使われることはほぼありませんが、オーケストラでA菅は必須。
B菅・A菅ともにどちらもよく使います。
その曲のニュアンスや調性などにより、B・A菅が使い分けされます。
高音担当のエスクラリネット
エスクラリネットは、B・A菅に比べてサイズが小さく音が高い楽器です。
ちなみに、エスクラリネットの「エス」は、小さいという意味の「S」ではなく、ドイツ語の「Es(エス)」のこと。
Esとはミの♭(フラット)のドイツ語の読み方で、エスクラリネットはこの音を基調にした音が鳴るのでエスクラリネットと言われるんです。
音が高いので、クラリネット独特なまろやかな音色をより輝かしく鋭くした感じの音が鳴ります。
通常はピッコロなど他の高音楽器と高音部を演奏しますが、エスクラリネットだけでソロを演奏することもありますよ。
低音担当のバスクラリネット
バスクラリネットは、B菅クラリネットよりも1オクターブ低い音が出ます。
楽器のサイズも大きくなり、重さもかなりあります。
「バス」という名称の通り、この楽器のオーケストラでの役割は低音部担当。
クラリネット独特な音を低くブィ~とした感じの響きです。
基本的に他の低音楽器と共に低音部を演奏しますが、バスクラリネットのみでソロ演奏をすることもあります。
まとめ
今回はオーケストラのクラリネットの役割についてまとめてみました。
木管楽器のスターであるフルートやオーボエよりもやや地味な印象かもしれませんが、クラリネットにはフルート・オーボエにはない「味」があります。
私もクラリネットを吹いていますが、オーケストラをやり始めた頃は、「フルートやオーボエってクラよりもなんかかっこいいな~」と思っていました。
高音部を担当する楽器はやはり目立ちますし花形ですから。
クラリネットだってソロはそれなりにあるし、まあまあ活躍する楽器ではありますが、どうしてもフルートやオーボエに付き従う役割が多めなんですよね。
でも経験を重ねるうちに、クラリネットならではのオーケストラの役割の良さが分かってきました。
内声部の役割にやりがいを感じるようになったんですよね。
主旋律・高音部・低音部を聴きつつ絶妙なバランスで内声部を演奏すると、これが気持ちいいんです。
これはクラリネットなど中音域を中心に演奏する楽器でないと味わえません。
しかもチェロやファゴットその他の低音楽器と共に低音部を演奏することもあるし、広い音域を生かして高音域を担当したりすることも。
ソロもあって、ハーモニー上では高・中・低すべてを担当する事も出来るということから考えても、こんなに役割が柔軟に担える楽器は他にないかもしれません。
私はこんな奥深い楽器をやっていてよかったなーと改めて思います。
あなたも今度オーケストラの演奏を聴く機会があれば、クラリネットの演奏の役割に耳を傾けてみてくださいね。