オーケストラの楽器配置はどのようになっているでしょう?
バイオリンが前側にたくさんいるな、というくらいなら何となく想像がつくと思います。
では、ヴィオラはどこに配置されているのか、またクラリネットやファゴットはどの辺りに位置しているのかなど、1つ1つの楽器の事については具体的に分からない方もいらっしゃるでしょう。
音楽をやっていらっしゃる方でも、オーケストラにあまり関わりがない場合は楽器配置のことまではパッと思いつかないかもしれません。
あんなにたくさんの人数が舞台の上にギッシリと座っていると、ごちゃごちゃして余計に分かりづらいかもしれませんね。
そこで、今回はオーケストラの楽器配置について調べてみました。
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オーケストラの主な楽器配置には、「ストコフスキー・シフト」と「古典配置」という2通りがあります。
まず「ストコフスキー・シフト」から見ていきましょう。
主流の「ストコフスキー・シフト」
上の画像を見てみましょう。
これは現在最も一般的な楽器配置「ストコフスキー・シフト」です。
指揮者であるレオポルド・ストコフスキーが1930年代に考え出した楽器配置で、1950年代頃から一般的に使われるようになりました。
分かりやすくするため、楽器の種類ごとに色分けしてあります。
- オレンジ➡弦楽器
- 黄緑➡木管楽器
- 黄色➡金管楽器
- 青➡打楽器
楽器名が黒で書かかれたものと紫で書かれたものがありますが、その違いは後で説明しますね。
では各楽器ごとに詳しい配置を見ていきます。
オーケストラの花形、弦楽器の配置
指揮者の周りを囲むように配置されている弦楽器。
オーケストラと言えば、やっぱり弦楽器の印象が強いですね。
舞台に向かって左から、第1バイオリン・第2バイオリン・ヴィオラ・チェロ、そしてチェロの後ろ辺りにコントラバスと並びます。
そして、第1バイオリンの最前列の舞台側(指揮者の左横)に座るのが「コンサートマスター」です。
また弦楽器は2人で1つの譜面台の楽譜を見ますが、この2人で1組の呼び方を「プルト」と呼びます。
オーケストラの弦楽器の総人数は、小規模なら22人程、大規模だと60人程と曲によって変わります。
では次に管楽器の詳しい配置を見ていきましょう。
ソロも担当する管楽器の配置
では、次に木管・金管から構成される管楽器の楽器配置を見ていきましょう。
管楽器の1,2列目は木管楽器、3列目が金管楽器、木管2列目辺りの横に位置するのがホルンという配置が一般的で、弦楽器と違い1人で1つの譜面台を使用します。
その他、ホルンは下の画像のように客席側からみて右側に来ることもあります。
そして、管楽器には「ひな壇」という台が設置され、その上にイスを置いて弦楽器よりも少し高い位置に座ります。
また、ひな壇は木管楽器の1列目→木管楽器の2列目→金管楽器とだんだん高くなっていきます。
それと、楽器名を黒色と紫色で書き分けた違いについて。
これは、黒で書かれている楽器はオーケストラの通常編成に含まれるもの、紫で書かれた楽器は特殊楽器であるため含まれないことも多い、という違いになります。
その他、チューバは特殊楽器ではありませんがこの楽器も限られた曲のみになりますし、その他の黒字の楽器も曲によっては編成に含まれない場合もあります。
プログラムによって、1回の演奏会で1曲しか出番がないという楽器が出てくる場合もあります。
では、次に打楽器を見ていきましょう。
種類が多い打楽器の配置
オーケストラの1番後ろに位置する打楽器。
打楽器もひな壇があり、しかも立って演奏するので、ある意味1番目につきます。
また、打楽器のスターと言えばティンパニですが、その他にも打楽器の種類はいろいろ。
スネアドラム・バスドラム・シンバル・トライアングル・タンバリン・グロッケンシュピール・ウィンドチャイム、などまだまだあります。
また、ティンパニは1人でティンパニのみを担当するのが通常ですが、その他の打楽器は1人で複数の楽器を担当することが多いです。
そのため、打楽器がティンパニしかない場合の曲では打楽器担当は1人で済みますし、その他の打楽器が複数必要な場合は打楽器の人数が3~8人ほどになる場合も。
人数が多い場合などは、オーケストラの1番後ろの列ではなく、下の画像のように木管2列目の右横に配置されることもあります。
その場合、ホルンは右側に配置される事が多いですね。
編成によって、楽器の配置が変わったりするんです。
このように、弦楽器はバイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバスの4種類が必ず含まれるのに対して、管楽器・打楽器は曲によりその楽器が含まれなかったり配置が変わってきたりします。
それでは次にもう1つの配置である「古典配置」について見ていきましょう。
以前はこちらが主流「古典配置」
上の画像が古典配置です(古典配置は対向配置、または両翼配置⦅りょうよくはいち⦆とも言われます)。
管楽器や打楽器の配置はストコフスキー・シフトと同様ですが、古典配置にはそれ以外の大きな特徴があります。
それは、弦楽器の配置。
分かりやすくするために、ストコフスキー・シフトと配置が異なっている弦楽器の名前を赤字にしました。
ストコフスキー・シフトでは左から第1バイオリン、第2バイオリン、ヴィオラ、チェロ、右側にコントラバスとなっていましたが、古典配置では第1バイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2バイオリン、左側にコントラバスが来ます。
元々、ストコフスキー・シフトができる1950年代まではこの古典配置が主流でした。
古典派やロマン派などの時代の曲は、この古典配置を前提として曲が作られているんですよね。
ストコフスキー・シフトが主流とはいえ、当時の音楽の正確な再現を目指す意味で現在では古典配置で演奏する団体も増えてきています。
ストコフスキー・シフトと古典配置のサウンドの違いを感じることも音楽の楽しみの1つになりそうですね。
さて、オーケストラの楽器配置はこれまでにご紹介してきた弦楽器・管楽器・打楽器で構成されるものが通常ですが、その他の楽器が含まれることもあります。
次にその例を見ていきましょう。
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それではその他の配置について説明しますね。
オーケストラの配置はストコフスキー・シフトをもとに見ていきましょう。
ピアノ・ハープ・合唱の配置
上の画像はピアノとハープが配置された場合のものです。
ピンクの丸印で示してあるように、ピアノやハープは第1バイオリンと第2バイオリンの間の後方辺りに配置されます。
協奏曲のソリストとして演奏する場合は中央に配置されますが、オーケストラの構成の1パート扱いの場合はピンクの丸印の位置が通常です。
ピアノやハープが含まれる曲は限られてきますが、比較的新しい時代の曲に多め。
では、合唱が入る時はどのように配置されるか見てみましょう。
合唱は金管楽器の後ろに配置され、打楽器はホルンの位置へ、ホルンは左側へ配置されることが多いです。
または、ティンパニのみ金管楽器の後ろへ、その他の打楽器は木管楽器の左橫に配置されることもよくあります。
合唱が入ると規模の大きな曲になることが多いです。
ベートーベンの第九も合唱が入った楽器配置ですね。
ではそれ以外のちょっと変わった楽器配置も見てみましょう。
ちょっと変わった変則的配置
その他例外として「変則的配置」というものもあります。
いくつか例を挙げましょう。
- トランペットが舞台の4隅にそれぞれ4名配置される。
- 指揮者のすぐ横にチューバが座る。
- 木管楽器がひな壇ナシで弦楽器と同じ高さの位置に並んで座る。
これらはほんの一例で、まだまだあります。
現代音楽を演奏する時など、こういった変則的な配置が増えてきています。
時代が進むにつれて、まだまだ変わった配置が生まれそうですね。
まとめ
今回は、オーケストラの楽器配置についてまとめました。
日頃オーケストラにあまり馴染みがないと、1つ1つの楽器配置を事細かく覚えるのは大変かもしれません。
その場合は「音が小さめの楽器は前、大きめの楽器は後ろ」と考えてみると分かりやすいですよ。
一般的に楽器の音は『弦楽器<木管楽器<金管楽器』、つまり弦楽器よりは木管楽器の音が大きい、木管楽器よりは金管楽器が大きいとなっています。
私はクラリネットを吹いているのですが、オーケストラでは私のすぐ後ろにトランペットがいます。
間近で聴くトランペットの音は想像以上に音が大きく、耳がおかしくなりそうになる事も。
こんなに音が大きければ、1番後ろの列でも十分に客席に音が届くな、とつくづく思います。
それぞれの楽器が適確な場所に配置されることにより、バランスの良いオーケストラの響きが作り出されているんですね。
新しい変則的な配置が行われる事も増えてきた現代ですが、今後はもっと思いもつかないような楽器配置が生み出されるかもしれません。
ストコフスキー・シフトや古典配置などの伝統的なものも尊重しつつ、新しい形の配置にも興味を持ちながら音楽を楽しんでいきたいですね。
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