金管楽器と言えば、きらびやかで華やかなイメージの楽器ですね。
パァーパァパァ~~とどこまでも響いていきそうな豊かな音、金銀キラキラ輝く楽器、スターとしての条件がそろっています。
オーケストラ、吹奏楽、ブラスバンド、マーチング、ジャズ、ポップスなど幅広く活躍し、楽器の形や構え方も種類によって個性豊か。
私は現在クラリネットを演奏していますが、実は小学生の頃はアルトホルンという金管楽器を吹いていました。
5年生になった時に、学校のバンドで自ら希望してアルトホルン担当になったのですが、当時は難しくてなかなか上手く吹けなかったんですよね。
でもその楽器が大好きで一生懸命練習していました。
ですので、私にとって金管楽器は、なつかしさと親しみのある楽器なんです。
今回は、主な金管楽器の種類とその一覧を紹介していきます。
金管楽器の一覧と種類
ではまず、金管楽器の一覧を見て頂いて、そのあとに各楽器の種類を細かく見ていきましょう。
主な金管楽器はこちらです。
トランペット属 | トロンボーン属 |
ピストンバルブ式トランペット | アルトトロンボーン |
ロータリートランペット | テナートロンボーン |
ピッコロトランペット | テナーバストロンボーン |
コルネット | バストロンボーン |
ビューグル | バルブトロンボーン |
ファンファーレトランペット | チンバッソ |
バストランペット | サクソルン属 |
ホルン属 | フリューゲルホルン |
フレンチホルン | アルトホルン |
アルプホルン | ユーフォニアム |
メロフォン | チューバ |
ウィンナホルン | スーザフォン |
ワグナーチューバ | 民族楽器その他 |
法螺貝(ほらがい) | |
ブブゼラ |
オーケストラや吹奏楽、ブラスバンドでおなじみの楽器から、あまり聞いたことがないものまで様々ありますね。
金管楽器の種類は、大きく分けて次の5種類があります。
- トランペット属
- ホルン属
- トロンボーン属
- サクソルン属
- 民族楽器その他
木管楽器と違い、金管楽器は大体のものが似たような構造で、マウスピースから空気を送り込み、音が出るところは朝顔(ベル)と呼ばれる広がった形状になっています。
楽器の素材は大体が真鍮(しんちゅう、または黄銅⦅おうどう⦆)や洋白(ようはく)といわれる金属で出来ており、マウスピースも楽器によってサイズ等は異なりますが、大抵真鍮で作られていて似た形状です(例外もあり)。
マウスピース
真鍮(黄銅)
洋白
金属で出来ていると金管楽器なのかと思いそうですが、そうではなく、マウスピースを口に当てて唇を振動させることにより音を出す楽器を金管楽器として分類します。
難しい言葉で言うと、唇簧管楽器(しんこうかんがっき)と言います。
では、金管楽器を種類ごとに見ていきます。
1番華やかな音!トランペット属
先ほどご紹介した金管楽器の一覧表の中から、トランペット属のものだけを改めて抜き出してみましょう。
- ピストンバルブ式トランペット
- ロータリートランペット
- ピッコロトランペット
- コルネット
- ビューグル
- ファンファーレトランペット
- バストランペット
トランペット属の特徴は、華やかできらびやかな音色。
楽器ごとに1つずつ一覧表にまとめてみましたのでご覧ください。
※ピストンバルブ式Tp=ピストンバルブ式トランペット
楽器名 | 特徴 |
ピストンバルブ式トランペット | 一般的に「トランペット」と言えばこのピストンバルブ式Tpのことを指し、オーケストラ、吹奏楽、ジャズなどで広く使われています。トランペット属の中で最もきらびやかな音色を持っています。 |
ロータリートランペット | ロータリーバルブというピストンバルブ式Tpとは異なる装置が付いていて、重厚な音色が出ます。オーケストラで主に使われ、ヨーロッパ(主にドイツ圏)ではロータリートランペットがよく使われます。日本はピストンバルブ式~よりも使用頻度は少なめですが、曲目によりロータリーが使われます。 |
ピッコロトランペット | 高音部担当で管の長さはピストンバルブ式Tpの半分ほど。フルート属のピッコロ、またはクラリネット属のエスクラリネットにあたる楽器ですが、高音楽器特有の金属的な音ではなく、ピストンバルブ式Tpより少し明るめな音が出ます。通常トランペット属のバルブは3つですが、ピッコロトランペットは4つあります。 |
コルネット | 主に吹奏楽やブラスバンド・ジャズ・オーケストラで使用されます。ピストンバルブ式Tpに比べてやや小さく、比較的音が出しやすいため演奏しやすい楽器。音色は柔らかめ。通常はトランペット奏者が持ち替えて演奏します。 |
ビューグル | 別名「信号ラッパ」とも言われ主に軍楽等で使われます。他のトランペット属のようにバルブが付いていないため、ピストンバルブ式Tpなどと比べて出せる音が限られます。 |
ファンファーレトランペット | 主に式典などで使われるもので、他のトランペット属の管がぐるぐる曲げられているのに対して、ファンファーレトランペットは曲げられておらずまっすぐな形です。歌劇「アイーダ」で使用されるため、別名「アイーダトランペット」とも言います。 |
バストランペット | 金管楽器の中・低音を担当する楽器で、トランペットというよりトロンボーンとユーフォニアムをミックスしたような音色。この楽器を考案したといわれているのが作曲家のリヒャルト・ワーグナー。名前は「トランペット」と付いていますが、このバストランペットを演奏するのは通常トロンボーン奏者です。 |
一口に「トランペット」と言っても、様々な種類があります。
中には「トランペット」という名前が付いていてもトロンボーン奏者が演奏する楽器もあったり。
バストランペット以外は高音部担当で、花形的な役割を果たすことが多いトランペット属は金管楽器のスターですね。
次はホルン属の金管楽器を見ていきます。
柔らかい音が特徴のホルン属
ではホルン属の楽器を改めて並べてみます。
- フレンチホルン
- アルプホルン
- メロフォン
- ウィンナホルン
- ワグナーチューバ
ホルン属の1番の特徴は柔らかい音。
金管楽器特有のきらびやかさがありつつも、柔らかさと温かみにあふれた音色を持っています。
ホルン属それぞれの楽器について、下の表にまとめましたのでご覧ください。
楽器名 | 特徴 |
フレンチホルン | カタツムリのような形が特徴の楽器で、一般的に言われる「ホルン」のことを指す楽器です。滑らかで柔らかい音が特徴で管の長さは約4mほど。オーケストラや吹奏楽・室内楽で活躍します。また、金管楽器ですが「木管五重奏」の編成楽器の1つです。 |
アルプホルン | アルペンホルンとも呼ばれ、スイスの山地でよく演奏されます。全長は約3.4mほどで、他の金管楽器のように管が曲がっておらず、まっすぐな形で先端が上向いた形状。金管楽器に分類されますが、材質は木製。バルブ等はついていないので出せる音は限られます。 |
メロフォン | トランペットとホルンの中間のような楽器。管の長さが短めで軽量であるため子供でも扱いやすく、歩きながら演奏するマーチングやポップスなどでよく使われます。音程が取りやすく、明るく軽めの音色が特徴。 |
ウィンナホルン | 1830年にウールマンによって作られたウィーン式のホルン。フレンチホルンとはバルブ構造等に違いがあり、より柔らかく暗めで重みのある音が特徴。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のホルンパートはこのウィンナホルンを使用しています。 |
ワグナーチューバ | 作曲家リヒャルト・ワーグナーが、オペラ「ニーベルングの指環」の上演にあたり作らせた楽器。ワグナーチューバの専門奏者は特におらず、通常はホルン奏者が持ち替えて演奏します。柔軟さの中に奥深さ・気高さを含んだような音が特徴。二―ベルングの指輪以外にも、ブルックナーその他の作曲家の曲で使われることがあります。 |
ホルン属といえばみんなカタツムリ形かなと思っていたら、メロフォンのようなトランペットのような形のものや、ワグナーチューバのように縦型のものまであります。
アルプホルンは、きれいな青空が見えるスイスの山奥でのどかに吹いてそうなイメージが勝手にわいてきます。
でもアルプホルンの世界大会などもあるようなので、私が勝手にイメージしているのどかな世界というわけでもなさそう。
では次にトロンボーン属を見ていきます。
スライド菅が特徴のトロンボーン属
次はトロンボーン属の仲間です。
- アルトトロンボーン
- テナートロンボーン
- テナーバストロンボーン
- バストロンボーン
- バルブトロンボーン
- チンバッソ
トロンボーン属は他の金管楽器のようにバルブやレバーを押さえて音を出すのではなく、主にスライドという伸縮管を使って演奏します。
右手で伸縮管を前後にスライドさせて音程を取るんですね。
では、1つずつ特徴を見ていきましょう。
楽器名 | 特徴 |
アルトトロンボーン | テナートロンボーンより少し小さめで、音域も高く明るめの音が出る楽器。通常テナートロンボーン奏者が持ち替えて演奏します。主にオーケストラで使われますが、最近ではアルトトロンボーンの役割をテナートロンボーンが担うことも。アルトトロンボーンの楽譜はアルト記号で書かれます。 |
テナートロンボーン | 一般的にトロンボーンと言うとこのテナートロンボーンのことを指します。オーケストラ、吹奏楽、ブラスバンド、ジャズ、ポップスなど多方面で活躍。最近では小柄な人でも演奏しやすい特殊なアタッチメント付きのものがよく使われています。 |
テナーバストロンボーン | テナートロンボーンにF管というアタッチメントを取り付けた楽器で、通常のテナートロンボーンよりも低音域が広がります。 |
バストロンボーン | 管の長さや音域はテナートロンボーンとほとんど同じですが、テナートロンボーンよりも管が太くベルが大きく出来ているため、音色が太く厚みがあり低音が力強く鳴ります。 |
バルブトロンボーン | ピストンバルブ式Tpのようなバルブが備わっているトロンボーン。19世紀頃広く使われていて、一時期は廃れていましたが、21世紀に入る前頃から再び使われ始めました。 |
チンバッソ | 楽器の下部にあるエンドピンで楽器を支えて縦向きで演奏する楽器。ヴェルディなどのイタリアオペラの曲で使われることが多いです。楽器類としてはトロンボーンの仲間ですが、スライドはなくバルブ操作で音を出し、通常はチューバ奏者が演奏します。 |
トロンボーンは、1520年頃にドイツのハンス・ノイシェルによって現在の基本的な形が出来ました。
バロックから現代までのクラシック音楽、吹奏楽、ブラスバンド、マーチング、ジャズ、ポップスなどとても幅広く活躍する楽器なんです。
金管楽器の中・低音担当のサクソルン属
では、サクソルン属の楽器を改めて見てみましょう。
- フリューゲルホルン
- アルトホルン
- ユーフォニアム
- チューバ
- スーザフォン
サクソルン属が活躍するジャンルは、吹奏楽、ブラスバンド、マーチングバンドなどです。
マーチングバンドの場合、チューバは大きくて演奏しながら歩くのは大変なので、代わりにスーザフォンが使われます。
では楽器1つ1つの特徴を見ていきます。
楽器名 | 特徴 |
フリューゲルホルン | サクソルン属の楽器ですが、トランペットやコルネットとほぼ同じ音域で、通常はトランペット奏者が持ち替えて演奏します。非常に柔らかく温かみのある音色が特徴で、主にジャズやブラスバンドで活躍します。 |
アルトホルン | サクソルン属の中では中音域担当の楽器。パッと見はユーフォニアムを小型にしたような形。吹奏楽やオーケストラで使用されることはほとんどありませんが、ブラスバンドで欠かせない楽器の1つです。 |
ユーフォニアム | 各国により呼び名や楽器の形状に多少の差がある楽器。世界でユーフォニアムとされる楽器には、サクソルン・バス、バリトン・ホーン、カイゼルバリトンなどがあります。 |
チューバ | 金管楽器の中で最も大きく低音担当の楽器。1835年にドイツ人の軍楽隊長ヴィルヘルム・ヴィープレヒトと楽器製作者のヨハン・ゴットフリート・モーリツによって現在のチューバ原型の楽器が開発されました。管の全長は約9m60cm、重さはメーカー・種類にもよりますが6kg~10kgほど。 |
スーザフォン | 1893年にアメリカの作曲家スーザが考案した、立奏が前提で作られている楽器。かなり大型の楽器で、上からかぶり片側の肩に乗せて演奏するので体への負担が大きいですが、現在ではより軽量な樹脂製の楽器が使われることも増えました。主にマーチングなどでよく使われます。 |
サクソルン属は、1800年代半ば頃に作られたものが多く、他の金管楽器に比べて歴史が新しい楽器。
また、ユーフォニアムやチューバ、スーザフォンなど低音を担当する楽器が多く、金管楽器の底辺をしっかりと支える役割を担っています。
個性的な民族楽器
では最後に、ちょっと民族楽器的な金管楽器を見ていきましょう。
- 法螺貝(ほらがい)
- ブブゼラ
日本と南アフリカの楽器を取り上げてみました。
上の画像から「見たことがある」と思われる方も多いでしょう。
どちらの楽器もパッと見は簡単に音が出せそうに見えますが、音を出す仕組みは他の金管楽器と同じです。
それぞれ特徴は下の表をご覧ください。
楽器名 | 特徴 |
法螺貝 | 奈良時代に中国から日本へ伝わったと言われています。戦国時代では士気を高めるために戦場で使われました。また、山伏や僧侶の行事等で使われます。 |
ブブゼラ | 南アフリカの楽器。大きさは1mほどでスタジアムホーンとも呼ばれます。材質は合成樹脂。音がかなり大きく、音程を調整するバルブなどはありません。南アフリカのサッカーの試合でよく使われます。 |
法螺貝もブブゼラも他の金管楽器のようにバルブやレバー、スライドなど音程を調節するものは付いていません。
しかし、息をコントロールすることで音程に変化を付けることが出来ます。
法螺貝は心地良い響きで1オクターブくらい音程が付けられます。でもブブゼラは本来単音で固定されていて、無理に音程をつけても少し聞き苦しい音になります。
まとめ
今回は金管楽器の種類を一覧にしてご紹介しました。
金管楽器は、種類ごとに音色の特徴があるとはいえ、木管楽器ほどのはっきりとした大きな違いはありません。
例えば、木管楽器のフルートとオーボエを聴き比べると音の違いが分かると思いますが、金管楽器のアルトトロンボーンとアルトホルンを聴き比べても、音の違いを感じにくいです(金管楽器専攻の方なら分かるのかもしれませんが、私は分かりにくいでした)。
このように、楽器ごとに特色があるとはいえ本来の音の本質が同じなので、金管楽器同士のアンサンブルはとてもきれいに響きます。
そのあたりは弦楽器のアンサンブルに似ているかもしれません。
今度機会があれば、ぜひ金管楽器のアンサンブルを聴いてみて下さい。
派手なだけでなく、柔らかさ、繊細さ、優美さなど広い表現力をもった金管楽器の魅力を感じるはずです。