一見、同じように見えるバイオリンとビオラ。
ビオラの方がバイオリンよりちょっと大きいということなら、知っている方も多いでしょう。
でもどちらか1つだけを見せられたら、バイオリン弾き・ビオラ弾きの方でもが見分けるのは難しそうです。
また、バイオリンかビオラどちらかを演奏している人の姿を見れば、この楽器何だか大きめだからビオラかなーとか、普通の大きさっぽいからバイオリンだろうとか予想がつきそうですが、これも当てになりません。
小柄な方がバイオリンを演奏しているとビオラに見えたり、大柄な方がビオラを演奏しているとバイオリンに見えたりしちゃうんですよね。
こんなにそっくりで見た目に大きな違いもなさそうなのに、わざわざバイオリン・ビオラと楽器を分ける必要があるの?と思われる方もいるでしょう。
そこで、今回はバイオリンとビオラの違いについてご紹介します。
ちなみに、私はバイオリン弾きでもビオラ弾きでもないただのクラリネット吹きですが、普段オーケストラでこの2つの楽器を目にしていて、私なりに思うことも交えて書いてみました。
バイオリンとビオラの違い
バイオリンとビオラの違いといえば次の3つです。
- 楽器の大きさ
- 音域
- 音色
1つずつ見ていきましょう。
バイオリンよりちょっと大きいビオラ
バイオリンとビオラ、この2つの楽器の大きさを比べてみるとビオラの方がバイオリンより少しだけ大きいです。
では、バイオリンとビオラの楽器の大きさは具体的にどれくらいの違いがあるのか、一覧表にまとめてみました。
全長 | 音が共鳴する本体部分の長さ | 重さ | 弓の長さ・重さ | |
バイオリン(フルサイズ4/4) | 約60cm | 約35cm | 約300~500g | 約73~74.5cmで約60g |
ビオラ | 約70cm | 約39.5~45cm | 約600g | 約72cmで約70g |
※バイオリンは3/4とか1/2などの子供向けのサイズがありますが、一般的に大人が使用しているフルサイズタイプ(4/4)で比較しました。
メーカーなどにより多少異なるようですが、2つの楽器のサイズは大体このようになっています。
こうやって比較すると、バイオリンとビオラは長さが約10cm・重さは100g~200gほどの違いがあることが分かります。
自分で楽器を構えてみればそれぞれの大きさの違いを感じそうですが、どちらかの楽器が1つだけそこに置かれていたら、見分けがつかなさそうな小さな違いですよね。
私が普段オーケストラで演奏している時の席は、真ん中より少し後方辺り。
最初の頃は、自分の席から前方のバイオリンとビオラを見比べても、パッと見楽器のサイズに大きな違いがあるようには見えませんでした。
また今回は、楽器本体だけでなく演奏する上で欠かせない「弓」にも注目してみたんですが、こちらはバイオリンよりビオラの弓の方が長さが短く、重みがあることが分かりました。
ちなみに弦楽器の弓は、楽器のサイズが大きいほど長さが短くなり、重くなります。
この弓のサイズも、私の席から見ている限り長さの違いは全く分からないですね。
バイオリンもビオラも、今回調べるまでどちらも同じ長さの弓をユサユサ動かしているのだとばかり思っていましたので、これは私にとって新しい発見でした。
バイオリンは高音域ビオラは中音域
音域については、バイオリンが高音域でビオラは中音域という違いがあります。
バイオリンが高めでビオラはそれよりも少し低めになる訳ですが、具体的にどれくらいの違いがあるか見てみましょう。
バイオリンの音域 | |
ビオラの音域 | |
かぶっている音域もありますが、高音域はバイオリンの方がビオラよりも9度高く、低音域はビオラの方がバイオリンよりも5度低い音が出ます。
こうやって見てみると、バイオリンの音域って結構広いですね。
ピアノの以外の楽器としては、音域の広さはトップクラスです。
また、ビオラの音域は私が吹いているクラリネットの音域に似ています。
クラリネットの曲をビオラで弾いたりすることが結構あるのですが、それは2つの楽器の音色の特徴が似た傾向であること以外に、このような理由もあるのかも。
ちなみに、通常の楽譜はト音記号で書かれるものが多いですが、ビオラの楽譜はハ音記号(アルト記号)で書かれることが多いです(音域により、ト音記号やヘ音記号も使われます)。
これは、ビオラとバイオリンはじめその他の楽器との違いといえますね。
ト音記号 | ハ音記号(アルト記号) |
ハ音記号はト音記号の楽譜とは音符の読み方が違うので最初は大変ですが、ほんの少しの違いなのですぐ慣れることが出来ます。
似ているようでちょっと違いのある音色
3つめの違いである「音色」について。
バイオリンとビオラの楽器本体の大きさや弓のサイズが異なるということは、その楽器から発せられる音色にも違いが出てきます。
バイオリンの音といえば、やっぱりあのキィ~キィ~という繊細そうでクラシックは自分達にまかせて、みたいな音。
主人公のような華やかさもあります。
でも弱そうなキィ~という音だけではなく、力強い音もカッコよく決まっちゃうのがバイオリン。
やっぱりクラシック音楽の1番の花形はバイオリンなんですよね。
それに比べて、ヴィ~とかムィ~とかムォ~とか、何とも言えない深みと渋みのある音を鳴らすのがビオラ。
聴きなれない人からすると、バイオリンとビオラの音の違いは分かりにくいかもしれませんが、よくよく聴けばビオラ独特の深味が感じ取れます。
私の勝手な想像力によると、バイオリンがクイーンっぽい音ならばビオラはとても優秀な将軍っぽい音のイメージです。
バイオリンのような華やかな音色とは少し違う、信頼できるような安心感のある温かな響きはビオラにしか出せないものです。
バイオリンとビオラの持ち替えについて
見た目が似ているバイオリンとビオラですが、この2つの楽器を時と場合により持ち替えて両方とも演奏出来る人がいます。
以前、弦楽器の方々と一緒にアンサンブルをした時に、あるビオラ弾きの方が楽器ケースに2つの楽器を入れていました。
それを見た私はてっきりビオラが2本入っているのかと思って、「ビオラを2本も持ち運ぶのは大変ですね」と言ったら、「これはバイオリンとビオラなんですよ」という答えが返ってきました。
よく見ると、確かに2つの楽器の大きさが違いました。
ビオラをやっている方は、元々バイオリン弾きだったという方がかなり多いです。
バイオリンとビオラは楽器の大きさが違うので、弓で弦をこするときの弓圧や音の響かせ方に違いがあり、バイオリン弾きの方がそのまますぐビオラを上手く弾ける訳ではありません。
でも、指使いやポジション移動など演奏技術の基本はほぼ同じなので、バイオリンからビオラに転向するというのは少し訓練すればそれほど難しくはないのです。
ビオラに転向後はビオラだけを弾くようになる方が多いですが、中にはそのままバイオリン・ビオラの両方を弾く方もいらっしゃいます。
そして、そのような方はバイオリンとビオラを一緒に持ち運ぶためのダブルケースを持ち、ある演奏の時はバイオリンまた別の演奏の時にはビオラと、両方を器用に持ち替えます。
ちなみに一般的なバイオリンケースは、縦26cm前後×横85cm前後×厚さ15cm前後ほどですが、ダブルケースになると横・厚さはほとんど変わりませんが縦が40cmほどに。
2つの楽器を並べて収納するため、ケースの幅が広くなるんですね。
まとめ
今回は、バイオリンとビオラの違いについてご紹介しました。
この2つの楽器の違いとは大きさ・音域・音色でしたが、その他アンサンブルをする上での役割の違いもあります。
華やかな音で主旋律を受け持ち、先頭を走り続けるバイオリンに対して、和音の内声やメロディーの補佐、でも時には前に出て旋律を弾いたり等色々な役割を果たすのがビオラ。
楽器の大きさ・音域・音色の3つの違いが、このような音楽的な役割の違いにもつながってくるというわけです。
ちょっとした見た目の違いだけかと思ったら、こういったことまで異なってくるところを考えるととても興味深いですね。
この2つの楽器の違いについて、私としては少しは分かっているつもりでしたが、新しい発見もありました。
今回色々調べたおかげで、この2つの楽器の違いを感じながらますますオーケストラを楽しめそうです。
今後バイオリンとビオラの違いについて話題になった時、今回の記事の内容を話してみてください。
きっと尊敬されること間違いナシです。